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歌舞伎座は熱狂の坩堝(るつぼ)

歌舞伎座「七月大歌舞伎」夜の部を観に行きました。今回予約が取れたのは、二階席最前列中央の座席。ワイドな舞台全体を見渡せるのがうれしいポジションです。

演目は、「通し狂言 駄右衛門花御所異聞」。海老蔵が一人で三役の大活躍をします。舞台上での「早替わり」もふんだんに楽しめます。主人公となるのは、白浪五人男でおなじみの日本駄右衛門という大盗賊。この大悪党を、海老蔵は堂々と演じています。これだけのスケール感が出せるのは、海老蔵ならではだなあと思ったりもしました。

この日本駄右衛門という「怪盗」、自在に変装して悪事を働きます。ちょっと「ルパン三世」みたいです。ただし、可愛げや愛嬌はぜんぜんありません。むしろ、世界征服を企てる「悪の軍団」のボスに近い。終盤では、ゾンビの群れを操ったりして、かなりやりたい放題です。いっぽう、最後まで正体がつかみにくい「奴のお才」という女性は、ちょっとだけ「峰不二子」みたいだったりします。・・・というように、登場人物や筋立てにじぶんなりの見立てをさまざま楽しめる、外連味たっぷりの演目でした。

そして、いよいよ海老蔵の長男、4才の勸玄くん登場です。花道を「とことことこ」と進み出てきて、舞台から三分、揚幕(あげまく)から七分あたりのところ(七三の場所)で見栄を切った瞬間、場内全体が一気に沸騰しました。まるで異次元空間です。そして宙乗り。白狐の衣装を身にまとい、海老蔵に抱かれて宙に浮きます。勸玄くんが空中で手を振ったときがクライマックスでした。沸騰した熱湯がひっくり返って大渦を巻いた瞬間です。

あとになって思えば、場内のこの興奮、勸玄くんがただ「かわいい」ということだけが理由ではなかった気がします。今回はとくに、この父と子を応援したい、という、すべての観客に共通の思いがありました。その「思い」が、まさに結晶化し、炸裂した瞬間だったのでしょう。

この勸玄くんも、いずれは海老蔵を襲名するはず。その襲名披露の場に、この歌舞伎座の客席に、自分もまた立ち会うことができるだろうか。ずいぶん先の話になるけれど、できるものなら立ち会いたいものですよね。凜々しい青年となった「海老蔵」の姿に、この日の勸玄くんを二重写しに見ることができたらうれしいだろうなと思いました。

それでは。



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「大竹しのぶ」という女優(こまつ座公演『太鼓たたいて笛ふいて』)

紀伊國屋サザンシアターで公演中の『太鼓たたいて笛ふいて』を観てきました。
『放浪記』や『浮雲』で知られる作家・林芙美子を描く、井上ひさし原作の評伝劇です。

太鼓たたいて笛ふいて

林芙美子を演じるのが大竹しのぶさん。
このタイトル、どんな意味なのか、気になりますね。
太鼓をたたいて笛をふけば、その音色に誘われて鼓舞されて、人は前へと進みます。
耳に心地よく、あるいは勇ましい音色であればあるほど、その足取りははずみます。
ちょっと「ハーメルンの笛吹き」などというお話が思い出されます。

じつは林芙美子も太鼓をたたきました。
笛をふきました。
そのようにして戦時中、従軍女流作家としての彼女は、軍の宣伝に一役買いました。
というか、おおいに活躍しました。
彼女自身、あるひとつの「物語」を盲信し、文章を書くことによりその布教に手を貸してしまった。

でもそれが取り返しのつかないことだったことに気づく時が来ます。
自らの「非」を悟った彼女は、戦後、猛然として「別の」物語を書き始めます。
戦争未亡人や傷痍軍人や、そのほか戦争で傷を負った市井の人たちを見据えた「物語」です。
創作に没頭する中で、その営みはいつしか鬼気さえ帯びてきます。
自らの過去を「清算する」ことの困難に立ち向かいます。
心臓に持病を持つ彼女にとっては、凄絶な消耗戦ともいえる戦いです。

とてもむずかしいテーマが取り上げられているなあと思いました。
「物語」を供給する側にあるすべての人たちにとって「他人事」では済まないテーマです。
同時に、「物語」を受け取る側にいるぼくたちにとっても、そのむずかしさは同じです。
耳を研ぎ澄まし、「音」を聞き分けること。
「ハーメルンの笛」にずるずると引きずり出されるネズミの群れにはならないために。

舞台上の大竹しのぶさんから、いっときも目が離せませんでした。
とくに後半、第二幕がすばらしかった。

戦争で心に傷を負ってしまった若者がいます。
彼が自身の胸の内を哀しいまでに滑稽に吐露する長台詞の場面。
彼女はじっと佇み、その叫びを聞きます。
何も言わず、ただ黙っている聞いているだけです。

特に演技をしているとも思えないはずのそのとき。
言葉にできないすべての思いが濛気となって、彼女の小柄な姿を包みます。
その立ち姿がゆらゆら揺れて、眼前にまで迫ってくるような……
これが「オーラ」というものかなあと思いました。

『映画を見ればわかること』(川本三郎著:キネマ旬報社)という本の中で、以前上演された『欲望という名の電車』のことが書かれています。ヒロインのブランチを演じたのが大竹しのぶさんでした。

これまでのヴィヴィアン・リーとも杉村春子とも違った新しいブランチを作り出している。可愛く、痛々しいのである。ただ精神を無残に病んでゆく狂女としてのブランチではなく、大竹しのぶのブランチは、狂気と同時に、童女のようなイノセンスにあふれている。
(中略)
晩年、テネシー・ウィリアムズはテレビでアン・マーグレットが演じたブランチを絶賛したが、もし大竹しのぶのブランチを見たらそれ以上に激賞したのではないか。


もう、手放しの褒めようですね。

そういえば、ブランチも林芙美子も、どちらも同じように抜き差しならない「過去」を持ってしまう女性です。
ただ、ブランチがついには正気を見失ってしまうのに対し、林芙美子は最後まであきらめません。
斃れるその日まで、ペンを手放すことなく戦い抜きました。
大竹しのぶさんは、この二人をそれぞれ見事に演じ分けられたんだと思います。
ほんとにすごい女優さんですね。

その昔、映画『青春の門』で初恋の「信介しゃん」をけなげに慕っていたあの少女がなつかしいです。


それでは。



プロフィール

JIRO

Author:JIRO
東京下町で開業する司法書士です。
司法書士とはなにをする人か?
・・・一言では説明が難しいです。
といって二言三言あれば説明できるわけではなし。

このブログでは、日頃の出来事や読んだ本、観た映画などのことを書きつらねてみたいと思います。
あ、お仕事のこともすこし触れていきます。

(ホームページ http://www.noguchi-office.jp/)

相続なら江東区の司法書士 みどりの杜司法書士事務所(会社設立)

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