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「たとえ死んでも帰ってくる」(映画『永遠の0』のこと)

戦時中、勤労動員で働いていたことのある女性からお話を伺ったことがあります。
当時まだ女学生だったその方が働いていたのは、航空機を作る軍需工場。
作っていたのは、なんだか奇妙な形をした飛行機の部品です。
それがなんであれ、来る日も来る日も懸命になって作り続けていたそうです。

ところがあるとき、それが「特攻」専用兵器の部品であることを知ってしまいます。
お話から想像すると、たぶん、「桜花」という航空機だったのでは。
機首部に大型爆弾を搭載した、小型の航空特攻兵器です。
母機に吊るされた状態で出撃し、目標を目がけて発射される。
目的は、ただ敵に体当たりすることだけ。
着陸用の車輪さえもありません。

ひたすら作り続けていた部品が無慈悲極まる兵器だった。
それを知って、女性は泣いてしまったそうです。
涙が止まらなくなってしまった、と、当時のことを語ってくれました。

そもそもどんな兵器だって存在そのものが「無慈悲」なもの。
そう言ってしまうのは簡単です。
だけど、「簡単」にそう言ってしまった瞬間、見失ってしまうものがあります。
「特攻専用機」というものだけが持つ非情さや、その製作に携わることになってしまった人たちの慚愧の念。
そういったものを理解することができなくなってしまいます。

たぶん、完成した「桜花」に乗り込んで出撃しそのまま帰らない若いパイロットの姿が、彼女には一瞬、見えてしまったんでしょうね。
そしていまも思い出すたびに、心に見え続けているのではないでしょうか。
もう戻ってはこないその若者の姿が。

公開中の映画『永遠の0』を観ました。

高度な撮影技術によって、当時の航空機や艦船がスクリーンに映し出されます。
細部にまでこだわったリアルな映像が、戦地や戦場を再現します。
リアルであるだけに、特攻の場面もまた、これまでに観たどの映画よりも悲痛なものに思えました。
艦砲射撃により火だるまになった零戦が空中で四散し、あるいは黒煙をあげて真っ逆さまに海中に激突していきます。

「映画に過ぎない」「CGによる作り物の画面だ」「パイロットはただ俳優が演技しているだけ」。

いくらそう思おうとしても、観ていて言いようのない気持ちに襲われてしまいました。
言葉に「言霊」が宿るように、映像にも「映霊」とでも呼ぶしかないものがあり、ときにそれが作り手の思惑を超えたところでその映像に宿ってしまう。
ふとそんな気もしてしまったのでした。

この映画の原作では、太平洋戦争がたどった経過が、さまざまな証言者たちによって語られます。
この戦争で「何があったのか」について、とてもわかりやすく書かれています。
とっつきやすくて読みやすい小説なので、「まずとりあえず太平洋戦争のあらましを知る」ためには格好の作品だと思います。
ベストセラーになっているというのもうなづけます。

映画では、その「説明的」な部分はかなり省略されていました。
「海軍一の臆病者」と言われながら「妻の元に生きて帰る」と言い続けていた主人公。
その彼がなぜ自ら「特攻」を志願したのか。
中心となるテーマをきちんと浮き上がらせていて、よく練り上げられた脚本でした。

主人公は、妻に誓います。

「必ず生きて帰る。腕をなくしても足をなくしても帰る。たとえ死んでも帰ってくる」

この言葉の意味はラストで明らかにされます。

以前、信州上田の「無言館」に行ったときのことを思い出してしまいました(無言館)。
行ったまま帰ることのできなかった若い兵士たち。
彼らの残した絵画が展示された美術館です。

戻ってこない夫や家族、恋人を待ち続けるたくさんの人たちは、また、心ならずも特攻専用機の製作を手伝わされてしまったあの女性は、この映画のラストシーンをどんな思いでご覧になるのだろう。
観終わったあと、とりとめのない考えばかり、浮かんでは消えていきました。


それでは。


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プロフィール

JIRO

Author:JIRO
東京下町で開業する司法書士です。
司法書士とはなにをする人か?
・・・一言では説明が難しいです。
といって二言三言あれば説明できるわけではなし。

このブログでは、日頃の出来事や読んだ本、観た映画などのことを書きつらねてみたいと思います。
あ、お仕事のこともすこし触れていきます。

(ホームページ http://www.noguchi-office.jp/)

相続なら江東区の司法書士 みどりの杜司法書士事務所(会社設立)

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