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『紙の月』の二人の梨花(宮沢りえと原田知世)

映画『紙の月』を観ました。

平凡な生活に飽き足らず、銀行で働くようになったひとりの主婦。
仕事は外回りの営業です。
ところが、ふとしたきっかけで不倫に走り、横領を繰り返す日々に。
行き着く先はわかっていても、行けるところまで行くしかない。
そんな姿が描き出されていきます。

主人公の女性、「梨花」を演じるのは宮沢りえ。熱演です。
この作品、以前、NHkでもドラマ化されました。
そのときの「梨花」は、原田知世。
原作にほぼ忠実にドラマ化されていました。

それに比べて映画はかなり大胆にアレンジされています。
メインストーリー以外は、換骨奪胎されています。
NHKのドラマがとてもすばらしかったこともあって、アプローチを大きく変えたのかもしれません。

原田知世演じる「梨花」には、奇妙な清潔感があります。
存在そのものが「デオドラント」に思えるほどです。
彼女は、つぎつぎに周囲にあるものを欲望します。
彼女の中にある「空無」。
その引力が周りにあるものをことごとく引き寄せます。

ただ、何かをひとつずつ身にまとうほどに、彼女の「無臭性」はいっそう際だってくる。
いろいろな色を混ぜ合わせたあげくに「黒」に変わっていく絵の具みたいです。
皮肉なことに、黒く染まれば染まるほど、彼女自身が「純化」されていくようにも見えてきます。
「純化」され、色もにおいも失った彼女は、もはや自分自身の「引力」から逃れることができません。
ぴくりとも身動きができず、「空無」の世界に再び閉じ込められます。
だけどそこは、どこか安息にも通じる世界に思えます。

宮沢りえ演じる「梨花」は違います。
彼女の欲望の根源は、もっとストレートなものとして描かれます。
存在の根っこにある「渇き」。それがなければもはや「動物」としては生きていけないような、どうにもならない「渇き」です。
欲望し、何かを得れば得るほど、逆に彼女は身にこびりついた「錆(さび)」を一切れずつそぎ落とします。殻を脱ぎ捨てていきます。犯行が発覚し追い詰められた果ての彼女は、だからこそいまや「完全体」です。どこにだって飛び立っていける「自由」を、ついには手に入れます。せつなくてやるせない「自由」だけど、それでも「自由」は「自由」です。

原作をアレンジしていて興味深かったのが、同じ銀行の同僚として「小林聡美」というしたたかな女優さんを配したこと。
自分の裡にある「渇き」から目を背け続け、25年の間、勤め上げてきたベテラン行員である彼女。
「渇き」を無視し抑圧することで生まれた精神的脱水状態にも馴れなじみ、むしろそれと「殉じる」覚悟さえ抱いているような女性です。

梨花と彼女とが対峙するラストシーンは、どこか「合わせ鏡」を見るようにも思え、迫力がありました。向き合った二つの鏡は、どちらかが粉々になるまで鳴動することを止めないのではないかと思えるほどです。

原田知世の「梨花」と宮沢りえの「梨花」もまた、「合わせ鏡」なのでしょうか。
二人の「梨花」は、けっきょく同じ「ひとり」なのか。
ドラマ版をもう一度、観てみたくなりました。

それにしても・・・
女性が「女性」として生きるって、ほんとに大変なことだったんですね。
男もそれなりには大変です。
かつて「男は強くなければ生きていけない、優しくなければ生きる資格がない」とつぶやいた探偵だっていました。
でも、梨花のようにどうにもならない「空無」を抱えてしまったとしたら、あるいはまた、もう一人の梨花のように、うずくような「渇き」と共存しないといけないのだとしたら・・・・
どちらにしても男なんかよりよっぽど強くなければ生きていけないような気がします。
「優しくなくても生きる資格はある」、魂のそんな叫びさえ聞こえてきそうな、そういう映画でした。


それでは。

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プロフィール

JIRO

Author:JIRO
東京下町で開業する司法書士です。
司法書士とはなにをする人か?
・・・一言では説明が難しいです。
といって二言三言あれば説明できるわけではなし。

このブログでは、日頃の出来事や読んだ本、観た映画などのことを書きつらねてみたいと思います。
あ、お仕事のこともすこし触れていきます。

(ホームページ http://www.noguchi-office.jp/)

相続なら江東区の司法書士 みどりの杜司法書士事務所(会社設立)

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