スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

希望という名の鯨(映画『八月の鯨』のこと)

映画『八月の鯨』を観てきました。「新・午前10時の映画祭」での鑑賞です。



地味な映画なのに、客席はほとんど埋まっていました。
昔の名作映画をスクリーンでもう一度観るというぜいたく。
そう思う人がこんなに大勢いることを知って、なんだかうれしくなりました。

時は夏、場所はメイン州の海辺の別荘。
二人の老姉妹が暮らしています。
この二人が少女のころから、八月になると海辺では沖を泳ぐ鯨が見えました。
ところが最近はほとんど見かけることが少なくなっています。

目が不自由で口やかましい姉を支える妹。
たいへん有名な、高齢の女優さん二人が演じています。
この二人、なにかと感情はもつれがち。
でも、もつれはしても、ちぎれることはありません。
二人には、「鯨を見た」という、共通の記憶があるからです。
そして「鯨はきっとまた来る」という思いがあるから。

登場人物は少なくて上映時間も短い(90分程度)小品なのに、ラストに忘れがたい余韻の残る映画でした。

じつはこの映画、15年ほど前にいちど観ています。
そのとき確かに「鯨」の泳ぐ背中や尾びれを見たような気がしていました。
でも今回見直して、それが間違いだったと気づくことに。
「泳ぐ鯨」はまったくその姿の片鱗も見せません。
とんでもない記憶違いでした。

たしかに最近、物覚えは悪くなりました。
きのうのランチが何だったか、記憶が混乱するのも毎度のことです。
だから、過去に観た映画のシーンを取り違えて覚えてしまっていても致し方がない気もします。
とはいえ、見ていないものを「見た」という勘違いは、やっぱり気になりますね。
あの「鯨」は、いったい何だったのか。

歌人の永田和宏さんの『人生の節目で読んでほしい短歌』(NHK出版新書)に、こんな文章があります。

「藤原定家に「見わたせば花ももみぢもなかりけり浦の苫屋(とまや)の秋の夕暮」という有名な一首がありますが、「花ももみぢもなかりけり」と打ち消されることによって、却って花と紅葉は読者の心に強く焼きつけられる。……と、こう指摘したのは、塚本邦雄氏でした。」(51頁)

この映画の場合、「鯨を見た」という姉妹の記憶がぼくの心に強く焼き付けられ、その結果、「幻の鯨」が見えてしまった、ということなのかもしれません。

ただ、この映画の「鯨」は「八月の鯨」でなければ成り立ちません。
「四月の桜」や「十一月の紅葉」に置き換えることはできないでしょう。

毎年、春になれば咲いては散ることを繰り返す桜。
紅葉も秋になれば必ず赤や黄に色づきます。

いっぽうこの映画の「鯨」は気まぐれそのもの。
八月になったら来るのかそれとも来ないのか、誰にもわかりません。
鯨には鯨の事情もあることだから、やむをえないです。

それでも「来る」と信じて待ち続けることはできます。
歳月を重ねることで失うもの、毀れるもの、色褪せるもの。
それがどんなに増えたとしても、「信じて待ち続ける」ことだけはできます。

そういえば先日、「サマージャンボ宝くじ」を購入しました。
抽選日のその日まで、「信じて待ち続ける」ことができます。
待ち続けている、その間だけは、夢見心地が約束されています。
かくして「八月の宝くじ」は、束の間、連日の猛暑を忘れさせてくれるのでした。


それでは。

スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

JIRO

Author:JIRO
東京下町で開業する司法書士です。
司法書士とはなにをする人か?
・・・一言では説明が難しいです。
といって二言三言あれば説明できるわけではなし。

このブログでは、日頃の出来事や読んだ本、観た映画などのことを書きつらねてみたいと思います。
あ、お仕事のこともすこし触れていきます。

(ホームページ http://www.noguchi-office.jp/)

相続なら江東区の司法書士 みどりの杜司法書士事務所(会社設立)

カレンダー
03 | 2018/04 | 05
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。