FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『アフリカの日々』(映画『愛と哀しみの果て』の原作を読む)

『愛と哀しみの果て』という映画があります。



いささか冗長な語り口なのに、なぜか忘れがたく印象に残る、不思議な映画でした。
その原作となっているのが『アフリカの日々』(晶文社:アイザック・ディネーセン著)。




この連休でようやく読み終えました。
なんで「ようやく」なのか。
映画を観て以来、いつかこの原作を読んでみたいと思い、昨秋、この本を購入し、「早く読みたい」という思いと、「読むのが惜しい」気持ちとが交錯して長らく「積ん読」状態が続き、でも、今年の夏も終わったいま、考えてみれば、いや考えるまでもなく、来年になればまた「来年の夏」が終わってしまうわけで、その前に、いまこそ「区切りをつけなければ」というわかりにくい理由に駆り立てられて一念発起、この連休で一気に読み終えました。
感想は・・・「やっぱりいま読んでよかった」と「読み終えてしまったのが惜しい」とが交錯しています。

映画は、映像美あふれるラブストーリーとなっていて、ノスタルジックな味わいにも事欠きません。
それと比べ、『アフリカの日々』は一貫した筋立てがある小説ではなく、ディネーセンによる日々の記録、いわば回顧録です。

文章は主情に流れることなく、あくまでも淡々と綴られます。
でも、抑制しようとしてもしきれない思いがにじみ出てくることもあります。
それは、土地に暮らす人たちのたくましさや気高さに対する「敬意」であったり、動物たちの賢さ、崇高さに対する「感嘆」であったり、自然の雄大さ、神々しさに対する「賞賛」であったりします。

映画ではロバート・レッドフォードが演じる冒険家、デニス・フィンチ=ハットン。
「強い絆に結ばれた友人」として登場します。友人以上の存在であったことは、ただ行間でのみ語られます。
彼の悲劇的な最期も、見晴らしのいい丘陵に埋葬するまでの一部終始も、文章はつねに抑制されています。

たとえばこんなふうに。

「彼はこの高地を吸収し、この土地はデニスの個性の刻印をうけて、彼自身の心象のなかでかたちを変え、デニスの一部となった。いまアフリカはデニスを受け入れ、彼を変え、アフリカそのものの一部とするであろう。」(403頁)

デニスが彼女にとってどれだけかけがえのない存在だったのか。
この簡潔な描写のなかに、すべてが凝縮されています。
朝な夕なに現れて、墓のうえで横たわるようになったという二頭のライオン。
思わず胸を打たれる後日談です。
王墓を守るスフィンクスみたいです。

このエピソードは、映画でもまた余韻の残る名場面となって描かれていますね。
『愛と哀しみの果て』という長尺の映画が深く印象に残るのは、このシーンあればこそなんだろうなと思います。

アフリカに魅せられ、ときとしてその大地や丘陵と同化してしまうほどアフリカそのものを愛したディネーセン。
でもまた、別れのときはいやおうなく訪れます。
諸般の事情が押し寄せ、やむなくアフリカを去る最後のそのとき・・・・
「アフリカ」は、まさに人格を備えた存在として彼女の前に顕現します。

「去ってゆくのは私ではない。アフリカを離れるなど、私のとぼしい力をもってしては到底できない。逆に、引き潮のようにゆるやかに、かつおごそかに私から遠のいてゆくのは、このアフリカのほうなのだ。」(432頁)

荘厳なまでの擬人化ですね。
誰かに袖にされたときなどのために、この部分をストック・フレーズとして心に用意しておくといいかもしれません。

「去ってゆくのは私ではない。・・・引き潮のようにゆるやかに、かつおごそかに私から遠のいてゆくのは、彼女のほうなのだ。」

失恋の痛手など、軽々と超克できるとは思いませんか?
無理かな、やっぱり。

それでは。

スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです
プロフィール

JIRO

Author:JIRO
東京下町で開業する司法書士です。
司法書士とはなにをする人か?
・・・一言では説明が難しいです。
といって二言三言あれば説明できるわけではなし。

このブログでは、日頃の出来事や読んだ本、観た映画などのことを書きつらねてみたいと思います。
あ、お仕事のこともすこし触れていきます。

(ホームページ http://www.noguchi-office.jp/)

相続なら江東区の司法書士 みどりの杜司法書士事務所(会社設立)

カレンダー
11 | 2018/12 | 01
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。