『裁判百年史ものがたり』
前回触れた「八海事件」。
戦後の裁判史に残るこの事件をはじめ、日本を揺るがした12の重大事件について、推理作家でもある著者が書き綴った本があります。
夏樹静子著、『裁判百年史ものがたり』です。
司法権の独立を守ったとされる「大津事件」。
証拠を無視し、非公開裁判で24人に死刑が下された「大逆事件」。
戦後の渾沌を浮き彫りにする、ミステリアスな「帝銀事件」、そして「松川事件」。
言論の自由をめぐって争われた「チャタレイ裁判」も興味深く、また「尊属殺重罰規定」が「違憲」とされた歴史的裁判も取り上げられます。
12の事件がじつに絶妙なバランスで取り上げられているなあと、感心してしまいました。
「有責配偶者からの離婚請求」が認められた、画期的な裁判も語られます。
婚姻関係の破綻にもっぱら原因を与えた当事者からの離婚請求は認めない。
長く変わることなく運用されていた基準です。
しかし、昭和62年、最高裁は、新たな判断基準を示しました。
「婚姻の目的である共同生活を達成しえなくなり、その回復の見込みがなくなった場合」、有責とされる当事者からの離婚請求であっても、一定の要件の元に認めるものとする。
従来の原則をひっくりかえすような判例変更でした。
本書では、この判決に「女性の側の意識改革と自立を促す強いインパクト」があったことを強調します。
多くの女性が、「もう結婚には頼っていられない」という事実に目覚めたのだ、と。
社会の変遷が裁判を動かし、裁判がまた社会生活の有り様を変える。
大きなうねりの中で社会のしくみが移ろっていく。
そのことがとてもわかりやすく理解できます。
そういえば、「熟年離婚」という言葉が認知されたのも、そんなに昔の話ではありません。
手持ちの『現代用語の基礎知識』によれば、2005年度版から新たに登場しています。
その後、2007年から実施された「年金分割」と呼ばれる年金制度改革が熟年離婚の増加に拍車をかける、とも言われていました。
経済的に自立する手段を持たない女性にとってつねにネックとなる離婚後の生活。
この制度改革のメリットには無視できないものがありそうです。
先の判例変更に始まり、その後も続く世の中の変遷。
結果、「意識改革と自立を促され」、定年退職した夫の挙措動作を醒めた目で見やる女性たち。
亭主だけは、自分が俎板の上にいることを知りません。
首筋がひやりとするような話ではありますね。
それでは。
戦後の裁判史に残るこの事件をはじめ、日本を揺るがした12の重大事件について、推理作家でもある著者が書き綴った本があります。
夏樹静子著、『裁判百年史ものがたり』です。
司法権の独立を守ったとされる「大津事件」。
証拠を無視し、非公開裁判で24人に死刑が下された「大逆事件」。
戦後の渾沌を浮き彫りにする、ミステリアスな「帝銀事件」、そして「松川事件」。
言論の自由をめぐって争われた「チャタレイ裁判」も興味深く、また「尊属殺重罰規定」が「違憲」とされた歴史的裁判も取り上げられます。
12の事件がじつに絶妙なバランスで取り上げられているなあと、感心してしまいました。
「有責配偶者からの離婚請求」が認められた、画期的な裁判も語られます。
婚姻関係の破綻にもっぱら原因を与えた当事者からの離婚請求は認めない。
長く変わることなく運用されていた基準です。
しかし、昭和62年、最高裁は、新たな判断基準を示しました。
「婚姻の目的である共同生活を達成しえなくなり、その回復の見込みがなくなった場合」、有責とされる当事者からの離婚請求であっても、一定の要件の元に認めるものとする。
従来の原則をひっくりかえすような判例変更でした。
本書では、この判決に「女性の側の意識改革と自立を促す強いインパクト」があったことを強調します。
多くの女性が、「もう結婚には頼っていられない」という事実に目覚めたのだ、と。
社会の変遷が裁判を動かし、裁判がまた社会生活の有り様を変える。
大きなうねりの中で社会のしくみが移ろっていく。
そのことがとてもわかりやすく理解できます。
そういえば、「熟年離婚」という言葉が認知されたのも、そんなに昔の話ではありません。
手持ちの『現代用語の基礎知識』によれば、2005年度版から新たに登場しています。
その後、2007年から実施された「年金分割」と呼ばれる年金制度改革が熟年離婚の増加に拍車をかける、とも言われていました。
経済的に自立する手段を持たない女性にとってつねにネックとなる離婚後の生活。
この制度改革のメリットには無視できないものがありそうです。
先の判例変更に始まり、その後も続く世の中の変遷。
結果、「意識改革と自立を促され」、定年退職した夫の挙措動作を醒めた目で見やる女性たち。
亭主だけは、自分が俎板の上にいることを知りません。
首筋がひやりとするような話ではありますね。
それでは。
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